mission-header-wellness-systems01

「対話を通じてウェルネスシステムのダイナミズムを伝える」

― ウェルネス・システム研究所のミッションを聞く ―

ウェルネス・システム研究所の社名にもなっているウェルネスとはなにか。そして、ウェルネスを「企業とガバナンスを動かすシステムに取り入れる」とはいかなることか。

ウェルネス・システム研究所・代表 村松邦子のインタビューを通じてお伝えします。

ウェルネスとの出会い

– ウェルネス・システム研究所の社名にもなっているウェルネスとは何でしょう。

ウェルネスは、「健やかで幸福な状態」のことです。これは身体、心、社会的健康を基盤にして、自分らしい豊かな人生(QOL)を志向している総合的な健康概念です。
企業で言うなら、株主・役員・従業員それにすべてのステークホルダーが健康で幸せであることです。

十数年前、リーマンショック後のあたりでしたか、経営管理と健康管理を統合的に捉えようとする「ウェルネス経営」という言葉を知り、衝撃を受けました。その当時、私は企業倫理推進・内部統制を担当していたのですが、メンバーの心身の健康状態や人間関係が、事故や不祥事などの問題につながっていることを実感していたからです。

そうであれば「個人の健康は組織の健康を映す鏡」ととらえ、働く人が生き生きと能力を発揮できる職場環境を作ることが、健全な組織づくりの基盤になると思いました。

その後、社会人大学院でウェルネスとマネジメントシステムを学ぶうち、これは確信となっていきました。

– ウェルネス経営というと、以前から例が多くありますが、なぜ経営にウェルネスの視点を取り入れなければならないのでしょうか。

企業を取り巻く問題の底辺に、すべて不健康さがあるからです。企業文化や風土の停滞・生産性の低さ・リーダーシップの不在・そして極端な例では企業不祥事が不健康さのあらわれです。

身体の健康・精神の健康・思考の健康さというのは、会社ではロイヤルティ、あるいはエンゲージメントとか、士気・やる気、結果として生産性が高くなる、という事象としてあらわれるものと思います。

これらのポジティブな力を生み出す健康さ、ウェルネスがあればこそ、会社は正常な意思決定や、業務の執行ができるわけです。そう考えると、ウェルネスというのは会社や社会というシステムを正常作動させるOSといってよいでしょう。

ウェルネスとガバナンス

– 最初に不祥事、ということがお話に出ましたが、不祥事がガバナンスの失敗であるとすると、ウェルネス・ガバナンスができていないといけないということかと思います。ウェルネス・ガバナンスはどのようにとらえているのでしょう。

ガバナンスは、そのフレームワークがあり、PDCAサイクルによって向上しますが、実行する場面を考えると、前提にメンバーの健康と自律があります。

ただ検査値がよいとか、残業が減る、などということではありません。モーチベーション、そして自律性を一人一人が持ち、進んでガバナンスを支えるほどに健康でなければガバナンスは機能しないですし、実効性もありません。

– すると、ガバナンスの前提に人と組織のウェルネスがあると考えればよいのでしょうか。言い方を変えると、ガバナンスの中ではウェルネスはどんな機能をもっているのでしょう。

今、ガバナンスは、かつてのように企業の内部の問題だけとはとらえられていません。ガバナンスは、社会とともにあります。持続可能な成長目標を社会が持つとするならば、それにリンクした会社の目標がないと、会社も持続しないことは自覚されていると思います。

社会が会社を評価し、会社も社会からの評価に応える関係が保てることがガバナンスに求められています。

社会と会社を結びつけるのは、会社のメンバー一人一人の健全な思考と組織のシステムであり、その源泉がウェルネスなのです。これはガバナンスの中でのウェルネスの機能と言えるでしょう。

対話という仕組み

– 村松さんがもう一つ重視されているものに「対話」があります。これはどういうことをいうのでしょう。

例えば、社会と会社の対話により、会社が持続的な成長目標を獲得し、実行することができます。一つの価値にしがみつくのではなく、社会の要請を会社のなかでどのように実現できるかが問題です。

こうして常に社会と会社とは対話をするのが現代の経営の特徴です。

ところで、社内のガバナンスの中でも、注力すべき目標には優先順位がありますが、優先順位付けというのは対話を通じて合意形成し、決まっていくものです。

会社が持続的な発展を目指すのであれば、対話を通じて、その時・状況、もう少し長い目で見ると時代に合った価値を中心に据えることが大切です。常に会社は流動的で、その中心課題を対話の中で獲得することが持続性・永続性を支えます。

対話は、会社をあるべき方向に動かすエネルギーといってもよいと思います。対話がなければ実効性のないスローガン的なガバナンスにしまうようなことになりますし。人の心を奮い立たせ、組織を動かすこともないでしょう。

<インタビュー/文 Toshie Takahashi>